Nov 11 (newsonjapan.com) - 2016年にさかのぼるチャイナショック、原油安では日本円への買いが集まり円高基調が続いていたが、同年末に米国大統領選でトランプ氏が当選して以来、大型景気回復期に入り米ドルが持ち直している。
以来、日本円は105円~115円の間でレンジ相場を形成しながらも、2020年後半に至るまでじわりじわりと円高基調に入ってきた。米中貿易戦争、イギリスの欧州連合離脱、コロナショック、そして2020年末の米大統領選挙など、海外での政情のダイナミックな変化に沿うように安全資産とみられる日本円の買いには根強い需要が見て取れる。
一方その間、米国株式市場ではS&Pをはじめ大幅な成長も見られ、特に2020年の各国での金融緩和、利率引き下げにより大量の資金が各国の株式市場を潤しても来た。
この数年の流れにおいて、市場に向き合うときに冷静に状況を見極めることができただろうか。トレーダーの心理学でも示されているように、トレードにおける心理はしばしば人間の判断を過剰に偏らせる。良い方向にも、悪い方向にも、である。
2020年以降も、各国での経済政策、米中交易関係などの要素のインパクトを正しく見極められるようにしたい。株式市場では比較的長期的な目線での投資が続くことになると思われる2020年後半ではあるが、比較的短期での投資リターンを目指すFX取引、CFD取引などに取り組むのならなおさらである。
海外での投資市場は利益を確実に生み出せるのか
そんな中、海外投資市場に勝機を見出す日系企業も多いが、2020年に話題となった中で鮮明なのがソフトバンクグループである。2020年はコロナショック以降、日経平均の過熱とともに株価を伸ばしながらも、2019年後半の米ウィーカンパニーのIPO失敗に始まり、投資において成果が出せず株主から自社株買いを迫られるなか、堅調に成長していた英アーム株売却の話が上がることとなった。投資で成果を出せずグループ企業の利益を食いつぶす中、株主からの要求を抑えきれずに手放すに至ったのだった。
ソフトバンクグループのように、海外投資を積極的に行う企業に楽天がある。同社は、米国株式市場での投資でQ3/19に1,000億円の減損損失を計上したのが記憶に新しい。しかし同社はEC事業(物流インフラ投資により利益は抑えられているものの、売上高・シェアは堅調に推移)、利益の核となるフィンテック事業(営業利益約210億円、Q2/20)の好調に後押しされ、潤沢な資金をもとにモバイル事業にも乗り出した。
新技術とともに海外に見出す勝機
Q3/20時点では、モバイル事業では契約数、人口カバレッジ、売り上げとも伸ばしているものの、先行投資がかさみQ2/20では500億円を超す赤字となっている。ソフトバンクモバイルを含め既存の競合他社に比べシンプルではあるが低価格かつ一本に絞った料金プラン、そして競合他社がそれまでに存在した通信網を引き継ぐ中、設備投資をゼロから行うという前途多難な滑り出しとなっている。しかし楽天のモバイル事業では、従来の基地局に見られたアナログ部品をすべてサーバーで処理する新技術、基地局の「仮想化」をアピールしており、この新技術が技術的・商業的に成功するかどうかを世界が見守っている。設備費用、営業費用とも3~4割の削減を可能としており、これに成功すれば海外への販路も大きく開かれる。
ECの巨人として知られる米アマゾンにも、ベライゾンと合弁でインドの通信事業者ボーダフォン・アイデアに40億ドルにも上る出資の話が出ることとなった(Q3/20)。ここでも、好調なEC事業に後押しされた形での出資検討となっている。モバイル事業にはそれだけ、勝機が潜んでいるとみられているのだろう。楽天が新しい設備投資スキームによる日本でのモバイル事業の立ち上げに成功すれば、中国などの成長国でスタートアップベンチャーと手を組み、はるかに少ない資金で海外ビジネスを収益源とすることができるかもしれない。
楽天が参入したモバイル事業は、ソフトバンクと市場を取り合うまでに成長できるのか、そして注目の新技術は海外販路を開き、米国株式に頼らない収益源とすることができるのか。今後も注目が高まるだろう。