Apr 23 (News On Japan) - オンラインギャンブルは、その名の通りにオンラインで利用できるギャンブルだ。
世界中のオンラインギャンブルに関する情報を発信するBettingGuideによれば、オンラインカジノやスポーツベッティング、宝くじのようなロッタリーといった種類が存在する。またオンラインギャンブルの産業は総じてiGaming(アイゲーミング)と呼ばれている。
日本では2022年4月に報道された山口県阿武町の特別給付金4630万円誤振り込み事件をきっかけに、オンラインカジノやインターネットカジノという言葉をよく見かけるようになった。また2024年4月にはアメリカのメジャーリーグで活躍する大谷翔平選手の通訳を勤めていた水原一平氏のニュースをきっかけに、スポーツベッティングやブックメーカーという言葉がメディアによって報道し始められた。
これら報道で登場したオンラインカジノやスポーツ賭博は、オンラインギャンブルに該当する。日本のメディアでは「違法オンラインカジノ」や「違法スポーツ賭博」というように違法性や消極的な印象を誇張する表現が多いが、アメリカやヨーロッパではオンラインギャンブルを完全に合法化している国も多く、「ギャンブル=悪」といったイメージはそれほど強くない。
例えば、スポーツベッティングが盛んなイギリスでは、ブックメーカーの運営企業がプロサッカーチームや競馬騎手等のスポンサーを努めることは多い。プレミアリーグなどの大きなイベント時には、チームの応援も兼ねて好きなチームが勝つことにベットするファンも非常に多く、スポーツ賭博はスポーツ業界を盛り上げる要素の1つとなっている。
オンラインギャンブルが合法な国について
オンラインギャンブルの違法性は国や地域によって大きく異なる。アメリカやインドでは州によって独自の政策を進めることができるので、ある州ではオンラインギャンブルは合法である一方で、ある州ではギャンブル自体がご法度ということがある。
イギリスのオンラインギャンブル
イギリスではオンラインギャンブルが合法で、産業自体が厳しい規制の下で管理されている。オンラインカジノ、スポーツベッティング、ポーカーなどのギャンブルサービスを提供する企業は、イギリス賭博委員会(UK Gambling Commission)からライセンスを取得する必要がある。この体系的な管理により、プレイヤーの保護とゲームの公正性が確保されている。
アメリカのオンラインギャンブル
アメリカではオンラインギャンブルの合法性は州によって異なる。例として、ニュージャージー州ではオンラインポーカー、オンラインスポーツベッティング、オンラインカジノが合法化されている。同様に、ペンシルベニア州とウェストバージニア州でもオンラインカジノとスポーツベッティングが認められている。しかし、インディアナ州ではオンラインカジノやオンラインポーカーは提供されておらず、オンラインスポーツベッティングのみが合法だ。
スウェーデンのオンラインギャンブル
スウェーデンではオンラインギャンブルが合法であるが、国による厳格な規制が設けられている。国が管理するこの制度の下で、オンラインカジノやスポーツベッティングなどは、国からライセンスを受けた業者によって提供される。消費者保護が強化されており、運営者はスウェーデンの法律と規則を厳守しなければならない。また、ギャンブルから得られる利益には税金が課されるため、ライセンスを持つ信頼できるサイトを利用することが重要だ。
カナダのオンラインギャンブル
カナダでは、オンラインギャンブルに関する規制は州や地域ごとに異なる。1985年にカナダ政府が各州にギャンブル法を制定する権限を委譲して以来、多くの州が独自のオンラインカジノを運営し、これらのプラットフォームでのギャンブル活動は合法とされている。さらに、カナダ国外の企業によるオンラインカジノの利用も可能であるが、これらの国際的なギャンブルサイトは合法でなければならず、カナダ国外に拠点を置いている場合、それぞれの州や地域の年齢制限を遵守する必要がある。
インドのオンラインギャンブル
インドにおけるオンラインギャンブルの法律は州ごとに異なる。1867年の公共ギャンブル法により、各州は自らのギャンブル施設の運営に関する決定を下す権限を有する。ギャンブルはスキルゲームとチャンスゲームに分けられており、スキルゲームは合法である一方で、公共のギャンブルハウスでのチャンスゲームは禁止されている。2000年の情報技術法により、インターネットを介したベッティングやギャンブルの言及は違法とされているが、全国的な明確なオンラインギャンブルの法律は存在せず、海外のカジノやブックメーカーを利用することは合法と解釈されている。
ブラジルのオンラインギャンブル
ブラジルでは2018年にスポーツベッティングが合法化され、2023年には新たな法案PL 3626/23が承認され、スポーツベッティングの実践に関する規制が導入された。しかし、カジノやその他のギャンブルゲームに関しては、まだ国家レベルでの規制が確立されていない。ブラジル国内ではオンラインカジノやスポーツベッティングを含むさまざまなギャンブル活動が提供されているが、これらの活動の法的な地位は未確定であり、今後の法律改正によって変更される可能性がある。
オンラインギャンブルの問題性
他の賭博と同様にオンラインギャンブルの問題性はその中毒性と個人の経済的な影響にある。オンラインギャンブルが社会にもたらす肯定的な経済効果やエンターテインメント性から、節度のあるギャンブルには賛成という人は多い。ただし、射幸心によって依存症の問題や家庭崩壊にも繋がり兼ねないことを考慮すれば、賭博に賛成できない人たちが居るのは当然である。
ギャンブルの習慣によって家庭関係やその他の人間関係、および心身の健康や仕事などに問題が発生している状態をプロブレムギャンブリング(Problem Gambling)と言う。これは依存症とまではいかない程度の状態から社会に悪影響を及ぼすギャンブル行為まで範疇の幅が広い概念だ。
プロブレムギャンブリングを予防するためのコンセプトとして、責任あるゲーミング(Responsible Gaming)が存在する。RGを促進する機関JSRG(Japan Sustanble Responsible Gaming)はRGを次のように定義している。
“「Responsible Gaming(責任あるゲーミング)」は、ギャンブリングに関連して起こる可能性がある害について、それを予防し、できるだけ少なくするためのフレームワークとその実践のことを意味する用語です。
フレームワークには、企業の自主的な取り組みから自治体・国の政策・法制までが、独自に、または協働する様々なレベルと形が存在します。「Responsible Gaming(責任あるゲーミング)」はその「対策の考え方や取り組み」であり「呼び名」にも相当します。
「Responsible Gaming(責任あるゲーミング)」の主眼は、すでに起こってしまった問題に対する後からの対策だけではなく、ギャンブリングの負の問題が起きる前に対策を講じ、そしてより健康的な行動習慣を促進しようとする公衆保健プロジェクトの展開にあります。”
参考:一般社団法人日本SRG協議会(JSRG) | Responsible Gaming(RG)とは
先ほど紹介したイギリスやスウェーデンといった国の規制当局は、RGの促進に盛んに取り組んでいる。使用できる決済方法やオンラインギャンブル業者が提供できるサービス内容を厳しく取り締まっており、ギャンブラーたちを問題あるギャンブリングの状態まで発展させないような工夫を張り巡らしている。
例えば、規制当局からライセンスを得た業者は、ユーザーに対して一定期間内の入金できる金額に上限を設定する入金制限や、損失額が一定に到達すると遊ぶことができなくなる損失制限といったツールの使用を強制している。また自己規制(Self-exclusion)という機能を有効にすると、ライセンスを得ているあらゆるサイトを利用できなくなる。
スポーツベッティングに関しては八百長問題を懸念する声も多くあがっているが、技術の発展と規制当局の厳しい取り締まりのおかげで、以前よりも透明性が高いサービスや監視が徹底されている。
オンラインギャンブルの今後
世界的に大きな成長を遂げているオンラインギャンブル産業であるが、スマートフォンといったモバイル端末の普及やオンラインサービスの発展により、さらなる発展が見込まれている。また、賭博を規制する法律はどこの国でも存在するが、「オンライン」という境界があいまいな賭場を完全に規制できていない国は多い。
オンラインギャンブルを合法化することで、海外へ資金が流れていくことを防ぐことができ、国や地域はライセンス発行や維持の管理を通して税収の増加を見込める。消費者を保護する法律も整備することができることを考慮すれば、法律的にオンラインギャンブルがグレーゾーンとされている国は、オンラインギャンブルを合法化した方が野放しとなるよりかは良いのではないだろうか。